【発注企業の皆様へ】2024年4月施行「フリーランス保護新法」への対応は万全ですか?

変化する業務委託のルール:なぜ今、フリーランス保護新法が重要なのか 

 多様な働き方の進展に伴い、フリーランスへの業務委託は多くの企業にとって欠かせない経営戦略の一つとなっています。しかし、従来の業務委託契約は、フリーランスの保護が十分とは言えない側面もありました。こうした背景から、2024年4月、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス保護新法」が施行されました。 

 この新法は、単にフリーランスを保護するだけでなく、発注事業者である企業の皆様にも、取引の適正化やコンプライアンス遵守を強く求めるものです。本記事では、この法律が企業の皆様の業務委託にどのような影響を与えるのか、そして、今すぐ取り組むべき対応策について詳しく解説いたします。 

「フリーランス保護新法」の対象となる企業は? 

 この法律の対象となるのは、主に以下の二者です。 

  • 特定業務委託事業者(発注事業者): 特定受託事業者に業務を委託する事業者。 
  • 特定受託事業者(フリーランス): 業務委託を受ける個人事業主、法人(従業員を使用しない場合に限る)。 

 規模の大小にかかわらず、フリーランスに業務を委託しているすべての企業が対象となりますので、ご注意ください。 

発注事業者が押さえるべき「フリーランス保護新法」の主要なポイント 

 新法は、発注事業者に以下の義務や努力義務を課します。これらを怠ると、行政指導の対象となったり、企業の信用を損なう可能性があります。 

  1. 書面交付義務の徹底

 これまでは口頭での契約も散見されましたが、今後は契約内容(業務内容、報酬、納期など)を明確に記載した書面の交付が義務付けられます。これにより、「言った言わない」のトラブルを防ぎ、契約  内容の透明性を確保することが求められます。 

  1. ハラスメント対策の義務化

 フリーランスに対するハラスメント(セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなど)は、企業の評判に直結する大きなリスクとなります。新法では、発注事業者に対し、フリーランスへのハラスメント行為に対する相談対応や、必要な措置を講じることが義務付けられます。社内規定の見直しや研修の実施が急務です。 

  1. 育児介護配慮の努力義務

 フリーランスの中にも、育児や介護と仕事を両立している方が多くいらっしゃいます。新法では、発注事業者に対し、フリーランスが育児や介護と両立できるよう、柔軟な働き方を認めるなどの配慮をすることが努力義務として課せられます。 

  1. 契約解除の制限と一方的な減額等の禁止

 発注事業者による一方的な契約解除や、正当な理由のない報酬の減額は、フリーランスの生活を脅かす行為です。新法では、一定の場合を除き、発注事業者による契約解除が制限されるとともに、一方的な報酬の減額や、発注者の都合による返品が禁止されます。予期せぬ契約解除や減額は、訴訟リスクにもつながります。 

  1. 紛争解決支援への協力

 万が一、フリーランスとの間でトラブルが発生した場合、新法では、行政による助言・指導、調停など、紛争解決を支援する仕組みが整備されます。企業側も、これらの紛争解決手続きに協力することが求められます 

 

今すぐ取り組むべき、発注事業者の対応策 

 フリーランス保護新法への対応は、単なる法令遵守に留まらず、企業としての信頼性向上、ひいては優秀なフリーランスとの良好な関係構築にも繋がります。 

  1. 業務委託契約書の見直し: 既存の業務委託契約書が新法の求める書面交付義務に対応しているか、速やかに確認し、必要に応じて改訂してください。契約内容の明確化は、トラブルを未然に防ぐ上で最も重要です。 
  2. ハラスメント防止策の徹底: フリーランス向けのハラスメント相談窓口の設置や、ハラスメントに関する社内規程の明確化、従業員への周知・研修の実施を検討しましょう。 
  3. 社内体制の整備: 育児介護配慮の努力義務に対応できるよう、フリーランスとの契約時や業務遂行中のコミュニケーションにおいて、配慮できる点がないか検討する体制を整えましょう。 
  4. 取引プロセスの再確認: 契約解除や報酬減額の際の社内ルールや、フリーランスからの問い合わせ対応フローなど、取引プロセスの各段階で新法に抵触しないか確認しましょう。 
  5. コンプライアンス意識の向上: 従業員に対し、フリーランス保護新法の趣旨や重要性を理解させ、フリーランスを単なる「外部の労働力」ではなく、「対等なビジネスパートナー」として尊重する意識を醸成することが不可欠です。 

 

当事務所が提供するサポート 

 フリーランス保護新法への対応は、企業の皆様にとって新たな課題となるかもしれません。当事務所では、企業の皆様が安心してフリーランスを活用できるよう、以下のリーガルサービスを提供しております。 

  • 業務委託契約書の作成・レビュー: 新法に準拠した契約書の作成や、既存契約書のリスク診断を行います。 
  • 新法対応に関するコンプライアンス体制構築支援: ハラスメント対策、取引プロセスの見直しなど、新法遵守のための社内体制構築をサポートします。 
  • 社内研修の実施: 従業員向けに、フリーランス保護新法の内容や留意点に関する研修を実施し、コンプライアンス意識の向上を図ります。 
  • トラブル発生時の法的対応: フリーランスとの間でトラブルが発生した場合の交渉代理、訴訟対応など、適切な解決に向けたサポートを提供します。 

 新法への対応は、企業価値を高め、持続可能な事業運営を実現するための重要なステップです。ご不明な点やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。